「融けるデザイン」の備忘録
- 作者: 渡邊恵太
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2015/02/18
- メディア: Kindle版
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最近私はサービスの新規開発をしているのですが、そこではよく「UX」という言葉を使います。私の「UX」の認識は「モダンな感じでストレスなくユーザーの痛みを解消する体験!」みたいにふわっとしたものでした。
例えば、ライブラリや自分で小さなサービスを作っている時に最初にビジネスモデル的な手順でペインとゲインをフィットさせるという事を行うとします。
ペインとゲインをフィットさせれば、必ずそこに手段が出現します。
その手段をどのような「UX」でユーザーに提供するのか、私は自分の知っている範囲内でしか考えられませんでした。(Googleでググった内容を取り入れてみたり、似た手段を模倣したりするなど)
なので作った物を説明する時に、私自身に強い思想があって設計した「UX」ではないので何かが喉元に引っかかるような感覚にいつも襲われていました。
さすがにその認識では今後の開発に支障をきたしそうなので、まじめに「UX」や「デザイン」を勉強しようと思いThe Guild代表の深津さんの読書バトンに書いてある本を全部読もうと思ったのがこの本に出会ったきっかけです。
この本には、これからの時代にUXやデザインを設計する際の観点が書かれていて勉強になりました。
個人的にお薦めの話は4章に書いてある暗黙性とインターフェースの話です。 暗黙的な人間の活動にインターフェースを提供する事で、行動として顕在化させたり、アルゴリズムに置き換えたりできるという事をGoogleの検索アルゴリズムページランクを例として説明しています(リンクを貼るという行為に着目して意味を見出した)。
ここでは人間の行動の意味を知る為のインターフェース設計をしようという話が続くのですが、これは「リーンスタートアップ」や「リーン顧客開発」に出てくるインタビューのそれと同じです。 前者はインターフェースから、後者はインタビューを通してユーザーの行動を明らかにしています。
結局、良いUXを作るには「抱えている問題に対して、現状どのように向き合っているのかを明示化する」という作業が一番最初に必要なんだろうなと思いました。
他にも「良いUX」を設計する為に必要な観点などが書かれており、デザインやUXと言われるとちょっと弱い...という私みたいな人が読むと少しは「UX」が理解できると思います。
以下は私の備忘録用の用語集です。
道具の透明性
- 道具を利用している最中にそれ自体を意識しないで済む状態、または意識しなくなる現象、良い道具は透明性が高い
- 例: ハンマーは手に持つとそれを意識せずに釘を打つ事に集中できる
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- 人の無意識に注目したデザイン
トイレに「スリッパはきれいに」と貼り紙をしても利用者はスリッパを揃えないが床に靴跡型のシールを貼るとなんとなくそこに揃えないといけないような気になる。操られている…! pic.twitter.com/lJE2HzRDPX
— Simon_Sin (@Simon_Sin) 2018年4月14日
- 人の無意識に注目したデザイン
ものづくりのインターフェース
- モノと人との境界面(ここで言っているモノとは現代では情報も含まれる)
- 現代のインターフェースは複雑である
- 石器時代: 人間 -> 道具 -> 対象
- 現在: 人間 -> 情報処理 -> 機械 -> 対象
自己帰属感
- ユーザーの動作の結果がほぼリアルタイムに近い形でユーザー自身にフィードバックされ、現実世界と画面の向こう側の世界との境界がなくなり、その結果として画面の映像が身体の一部のように感じられるあの感覚
知覚行為循環
経験価値(カスタマー・エクスペリエンス)
- サービスを通じて得られる効果や感動、満足感といった心理的・感覚的な価値。
- 「経験価値とはデザインによって人間が知らなかったことを体験させるのではなく、知っていたことを気付かせることである」
- ICC ONLINE | アーカイヴ | 2002年 | 第8期NewSchool 「行為と相即するデザイン」
- サービスを通じて得られる効果や感動、満足感といった心理的・感覚的な価値。
設計
iPhoneは非常に滑らかに動くがあそこまでする必要性は?
- 「 指とグラフィックとの高い動きの連動性が道具的存在となり、 自己帰属感をもたらす。 そしてその結果、道具としての透明性を得るためだ」
UX
- 環境の価値を行為が引き出す → 人や動物が「可能」を知覚 → 次の行為へ → 行為を拡張する道具が存在 → 別次元の「可能」を知覚 →... という循環
良いUX
- 良いUXは「可能」を知覚させる。良いUXを設計するにはとにかく自己帰属させる
ハイデガーの理論(道具的状態と事物的存在という考え方)
- 道具的状態: 透明の状態
- 事物的存在: 透明ではない状態(対象として認識がある)
- 例: キーボードを入力中は道具的状態だが、なんらかの問題で入力した文字がすぐに表示されないとキーボードが「引っかかる」という属性をもって現れる(事物的存在)